佐藤卓さんインタビュー

第1回「シゴトと私」

プロのミュージシャン志望から
広告代理店へ。

僕は大手広告代理店のデザイナーとしてキャリアをスタートしましたが、実は広告には何の憧れもありませんでした。もともとはミュージシャン志望。ロックバンドを組んで音楽事務所に所属し、何とかプロになりたいと思っていました。大学院へ行ったのもその夢を諦めきれなかったせいです。いよいよ卒業となり、諦めて就職先を探したら、ある大手広告代理店が見つかった。まず社会のことをゼロから勉強しなくては、という気持ちで飛び込みました。
入社してすぐ、故・鈴木八朗さんの下につきました。鈴木さんは『ディスカバー・ジャパン※』を始め、数々の名キャンペーンを手掛けた有名なアートディレクター。僕が新入社員研修でめちゃくちゃをやってしまったため、鈴木八朗につけてお灸を据えなければだめだ、ということになったようです。僅か半年ほどでしたが厳しく鍛えていただいて、目が覚めました。
ニッカの担当になったのは、入社から2年ほど経った頃。生意気だった僕は「自分がお金を出して飲みたいウイスキーはない」と言い放ったのです。すると「それなら提案の場を設けるから、自分で飲みたいウイスキーを考えてみろ」と上司に言われました。これが、僕の仕事における大きな転機の始まりでした。
※1970年代から、日本国有鉄道(現・ジェイアール)が国内旅行の推進を目的に実施した広告キャンペーン。