佐藤卓さんインタビュー

第1回「シゴトと私」

「やりたいこと」ではなく
「やるべきこと」をやる。

『ピュアモルト』の仕事をしていたのはバブル期でしたから、世の中すべてが過剰な風潮。お金も使い放題、デザインもやり放題です。その中で「そのまま」というコンセプトは過激だったと思います。そのままだから、パッケージはなるべくデザインしない。ネーミングもシンプルに、ピュアモルトのまま。そして、広告にお金はかけない。人はいいものに出会ったら、必ず人に伝えたくなるから。特に今までになかったもの、個性的でしかもおいしいものなら必ず人から人に伝わる、という確信がありました。振り返ればまさに今のクチコミ・マーケティングのようなことを考えていたわけですが、人から人へ伝わる力というのは新しいものではなく、もともと社会に備わっている力です。その力を使えるのだから広告にお金を使うべきではない、と考えたのです。
もちろん大規模な広告キャンペーンを行うほうが広告代理店としては利益になりますが、僕は本当にクライアントのことを考えて「何をするべきか」を提案したかったのです。デザインについても同じで、僕というデザイナーが何をやりたいかではなく、この商品にとって何をするのが正しいかを突き詰める。『ピュアモルト』のデザインは、そこから導き出されました。