社内風景

佐藤卓さんインタビュー

第1回「シゴトと私」

「やるべきこと」が
「やりたいこと」になる境地。

デザイナーという職業は、とかく自分を意識します。自分らしさ、自分のスタイルを表に出したがる。僕は『ピュアモルト』の仕事をきっかけに、そんなものはどうでもいいと確信しました。僕たちは誰でも個性を持っているのだから、心配しなくても個性は出る。スタイルは作ろうとして作るものではなく、自然にできてしまうもの。だから、あえて得意分野も作らない。得意分野があると、どんな仕事でもそこに落とし込もうと考えがちです。
誤解を恐れずに言えば、僕は表現には興味がありません。もちろん最終的な仕上げには手を抜きませんが、表現に到達するまでのプロセスに興味があるのです。「やりたいことをやる」のが仕事ではなく「やるべきことをやる」のが仕事。そして、それが習慣になると「やるべきこと」が「やりたいこと」に変わっていく。そうなるともう、仕事が面白くて仕方ない。放っておいたら週末でも仕事しているくらいです。
『ピュアモルト』は数ヶ月にわたり何度もプレゼンを重ね、試行錯誤の結果、発売されました。すると、しばらくしたら世の中がざわざわし始めた。ニッカのイメージが変わり、ニッカの他の商品まで売れ始めた。僕自身も初めて手応えを感じた仕事でした。