佐藤卓さんインタビュー

第2回「アイディアとは」vol.1

やるべきことに気づけば、
アイディアは降りてくる。

さまざまな商品のデザインの仕事をしていますが、クライアントから最初に話を伺う時はニュートラルにあらゆる情報を受け入れるようにしています。まずゆっくり話を聞きながら、どんな方向に行くべきかをクライアントと一緒に探していく。僕の場合は自分がやりたいことなど基本的にないのですが、万一やりたいことが見つかってしまった場合は変な影響が出ないように、すぐ芽を刈り取ります。また、伺った話の中で自分が知らないことは、なるべく経験してみる。工場へ行く、といった取材も必要です。そして、その商品を世の中の価値観に照らし合わせる。さまざまな情報、条件を頭に入れて泳がしておく。するとどこかでピッと何かと何かがつながる、「あ」と何かに気づくことがあるのです。
僕の仕事は発明ではありません。『ピュアモルト』だって既存のモノや価値をつないだだけで、言わば編集のようなこと。やるべきことに気づけば、アイディアは自然に降りてきます。ただしプロの場合は、ある限られた時間の中でアイディアが降りてくるようにしなくてはならない。その状況に自分を持っていくためには、体調も整えておかなくてはいけません。走りたい時に走れるように、常に準備しておくことが大切です。