佐藤卓さんインタビュー

第2回「アイディアとは」vol.1

モノに関わる経験すべてが、
デザインの対象。

プロダクト・デザインの仕事は、人がモノに関わる経験すべてをデザインすることです。たとえばウイスキーなら箱を開ける・瓶を取り出す・フタを開ける・グラスに注ぐ・飲む・飲み終わって瓶が空になる、といったすべての過程での経験がデザインの対象。つまり、その間に目に見えるもの、触れるもの、音、味や香りなどをデザインするのです。
モノと人の関係はもちろん、人を含めたモノを取り巻く環境の中でそのモノが果たす役割、影響力を深く考える。すると、どんなモノにもさまざまなデザインの可能性があることがわかります。
買う環境のことを考えてみましょう。コンビニは最も現代的な売場です。あらゆる方向から明るい蛍光灯の光が射す、陰影のない世界です。そこで売られるモノは、ある意味すべてが記号化されています。おにぎりを買う人は、おにぎりを本当においしそうだと感じる暇もなくおにぎりという記号を買い、食べているのではないでしょうか。そうだとしたら、コンビニに置かれる商品はどのように見えるべきなのか。たとえばチューインガムなら、牛乳なら、どんなモノとして伝わるべきなのか。さまざまな側面から考え、デザインしていくのです。